ブラック企業 リンク集
ブラック企業(ブラックきぎょう)またはブラック会社(ブラックがいしゃ)とは、従業員に労働法やその他の法令に抵触しまたはその可能性がある条件での労働を強いたり、関係諸法に抵触する可能性がある営業行為を従業員に強いたりする、若しくはパワーハラスメントという暴力的強制を常套手段としながら本来の業務とは無関係な非合理的負担を与える労働を従業員に強いる体質を持つ企業(学校法人、社会福祉法人、官公庁や公営企業、医療機関なども含む)のことをさすインターネットスラングである[1]。
ブラック企業の呼び名は、元々は暴力団等の反社会的勢力との結びつきが強い企業に対する隠語であったが、近年は、従業員に劣悪な環境での労働を強いる等の企業を指すようになっており、入社を勧められない企業、転職を推奨される企業がブラック企業と総称される。
言葉の由来には求人広告や、パソコン通信時代のネットワークコミュニティからなど諸説ある。
拡大解釈として、事業所の周辺環境や地元地域社会への配慮・貢献、消費者のニーズ・アフターケアに対する考慮が薄い企業などを指して使われることもある。消費者に対するサービスと質が劣悪である場合にも使われることがある。
ブラック企業への入社は、一般企業に比べ比較的容易である。労働集約的な企業が多く、多くの人手を必要としている。また離職率が高いので、常に新人を募集し続けており、内定も早い。しかし入社後には厳しいノルマや長時間労働、人のやりたがらない・割に合わない仕事、理不尽な仕打ちが待ち、心身ともに疲弊し破綻をきたし、退職に追い込まれる。また経歴が汚れる為、その後の転職活動も不利になる。ブラック企業は人材を大量浪費し、食い潰す事によってのみ成り立つ、技能系のブルーカラーで言う本来の3Kと言う概念を超え、ホワイトカラー版3K職場とも言える事態ともなっている。
この様な企業体質は、社会問題・民事訴訟・労災申請・刑事訴訟(侮辱罪、暴行罪、傷害罪、背任罪)などの形で表面化することもある。例えば合理的理由の無いリストラや名ばかり管理職、パワーハラスメント、偽装請負、過労死[2]、保険年金逃れ、派遣切り、不当労働行為、遺族による労災認定訴訟などがある。労働問題以外に、コーポレートガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令遵守)、 CSR(Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任の遂行)にまつわる諸問題が取り沙汰される場合もあり、一般企業と比べ、コンプライアンスの無視が常態化している事が多い。
ブラック企業は基本的には個々の企業が持つ体質的・慣習的な問題であり、また風説・通説に基づいたレッテル貼りという一面もある。しかし従業員や就職希望者にとっては死活問題である。インターネットなどでは活発に議論・情報交換がなされている[2]。
ブラック企業は被雇用者にとって生き地獄であり避ける事が望ましく、自衛の為にも可能な限り情報収集する事が重要である。
求人広告 [編集]
離職率
ブラック企業かを知る最も簡単な方法は離職率であるが、離職率や退職者数が外部に公開されないため、実際の離職率を知る、あるいは推し量ることは難しい。
離職率の高い会社は、どのような優良企業・有名企業・老舗であろうとも潜在的なブラック企業と評価されうる。当然、企業はその事実を隠蔽しようとするが、インターネットで個人で企業の情報を発信できる現在、語るに落ちることがある。その他、パワーハラスメントやいじめ、企業不正に関する裁判例を検索する。複数回ハラスメントが起きている会社や学校は、ブラック企業である可能性がある。
* 「従業員の平均年齢が○歳前後」と若い→大半が平均年齢前後で退職しておりベテランがあまりいない。
* 「若い仲間が多く…」→ベテランはいるが、若手社員の退職が多く社員の入れ替わりが激しい。使い捨て・使い潰しを前提とした大量雇用を行っている疑いあり。
* 「大量採用」「キリのいい数字(100人など)の採用数」「高頻度の求人広告」→採用数が多い、即ち退職者も多いことの裏返し。従業員の使い捨てが目的の無計画大量採用の疑いあり。
* 「離職率の低い会社」→試用期間中の離職者や非正規雇用を計算外としている場合もある。そもそも、わざわざ離職率の低さを取り立てて宣伝する合理的理由がない。
ノルマ
* 「未経験者(初心者)大歓迎!」→優遇されるのは経験者で、仕事のできない・分からない未経験者はたちまち白い目で見られる。
* 「若い社員にも重要な仕事を任せます」→ 未経験者同然なのに仕事の指導やアドバイスはなく、入社と同時にベテランと同等の仕事をこなすことを要求し、責任も要求する。
* 「ノルマなし」「頑張った分だけ報われる」→実際はノルマ以上の目標を、「従業員が定めた自主目標」として会社側により設定を強要する。達成できなければ懲戒解雇などの制裁が待っている。
長時間労働
* 「アットホームな雰囲気」→実際は上司や幹部が過剰に干渉。サービス残業や付き合い残業が恒常化。休日も会社の行事に強制参加。
* 「残業なし」→残業「代」がないという意味。自己責任の名目の下「無給」で残業させることであり、管理部門に多く見られる状況。
* 「少数精鋭」→仕事量に対する人的リソースがきわめて過少な状況。残業や休日出勤が当然。大リストラを終えた企業の採用などでしばしば聞かれる文言。
給与
* 「月30万円以上可能!」→残業・休日出勤・夜勤などの手当を(労働基準法で認められる限界まで)加算した合計額。歩合給の比率が大きいにもかかわらず、従業員の平均の年齢・勤続年数の割にモデル年収が不自然に高い事もある。これらの事が求人広告には目立たないよう記載されている。または悪徳商法によって違法に得た利益の還元も含まれることがある。
* 「保養所完備」「昇給は年2回」「転勤(引っ越し)の費用の会社負担」→実際に利用できるのは、役員や成績優秀な社員のみ。場合によっては「自動車通勤可」などでも同様の状況がある。
* 「交通費全額支給」→不自然に勤務地が遠い求人広告を出稿している企業は、地元の住民にその会社の悪評が広がっている場合がある。
イメージの偽装
* 「明るい雰囲気」→体育会系的な体質の企業。根性論中心の営業職、精神論中心の社風、上司や先輩社員による暴力や暴言が日常茶飯事。
* 求人誌での好々爺風の初老の男性や綺麗目な女性の写真や、社長と社員が笑顔で語らう写真など無害そうなイメージを前面に出す企業は、印象操作によりブラック会社であることを逆に隠そうとしていることを疑わせる。
* 求人広告や会社の求人用パンフレットでの「働きやすい」「実力を発揮できる」「私(僕)の人生を変えた」などの体験談→上層部や求人誌の制作会社による「やらせ」。
* 求人サイトにおける「学生に人気のある企業ランキング」の投票でアルバイトを雇ったり社員を動員させたりして「組織票」を入れさせ、あたかも大学生に人気があるかのように擬装する。
職種の偽装
不人気な職種を説明する際、カタカナ語や専門用語、あるいは独自の造語を用いて曖昧に説明することで意図的に誤認させたり、他の職種と兼任させるなどで押し付ける手口もある。例えば、「販売」なら店頭販売ではなく、訪問販売、「お客様サポート」はクレーム電話の処理係など。
* カタカナ職種→不人気職種が多い。例えばテレフォンアポインター(テレアポ)は電話による営業で、ひたすら電話をかけさせる。「サービスアドバイザー」などのカタカナ名称は訪問販売。前述のようにメンテナンス部門やクレーム処理を兼業させることもある。アミューズメントスタッフ・ホールスタッフはパチンコ・パチスロ店勤務のスタッフ。そのまま書くと聞こえが悪いから。
* 「高給職種」ばかりを謳う求人誌の中には、職種が単に「営業」「販売」「接客」「データ入力」などとしか書かれていない企業もあり、どういう会社なのか、何の職種の営業なのかを一切記していないのもある。例を挙げると「(単に)営業」は詐欺的な訪問販売や勧誘、「(単に)接客」は違法風俗の業種・職種、「(単に)データ入力」は迷惑メール業者や出会い系サイトのサクラ役などパソコンやインターネットを使った犯罪を行なう会社など違法な事業を行っている企業が多い。
* 「講師募集」→悪徳教材会社の訪問販売。また、実際の「教室」である場合でも、異業種の会社が手掛けるサイドビジネスである事も珍しいものではなく、全く門外漢の上司に振り回されたり、講師業とはかけ離れた会社の本業を手伝わされる事も多い。
* 「要普免」→内勤事務の求人の場合、入社後に営業職への強制的に職種転換されるケースが多い。人手不足や適性欠如などの口実がつけられる。
* 派遣会社の「営業」や「コーディネーター」→派遣社員の募集。「現場研修」の名目で、取引先(派遣先)企業に単なる派遣労働者として派遣する。
面接 [編集]
* 面接が一切ないか、形骸化している。大量に離職し、また離職後すぐに代替の人材を確保できるため、よほどのことがない限りほとんど採用する。
* 「人物本位の選考」→退職者が多いことから、入社するなら誰でも良いことの一例。
* 顔合わせ・打ち合わせ・面談・職場見学等の名目で、派遣先企業での違法な事前面接が行われる。交通費や拘束時間分の賃金は支給されない。この場合、当日の出席者の氏名や役職と発言内容などを、ICレコーダーでの録音やノートへの記録メモを行い、行政機関に派遣法違反を申告できる。
職場 [編集]
社内の内実は、就職後だけではなく、就職を目指して面接の為に企業・事業所を尋ねた際などにも、注意深く観察していれば目にできることがある。
* 就職希望者が希望した職場見学の拒否。現場の実情、特に実際に従業員が作業中の現場や事務所などを見せる事を嫌がる。
* 人数の多い企業や部署にも関わらず、制服・作業服などに名札・刺繍など従業員の名前・所属を簡単に確認できるものが無い。従業員の入れ替わりが激しい状況を窺わせる。
* 染髪・アロハシャツ・ピアスなどの服装や装飾品をつけていたり、たとえ背広・ネクタイなどであっても必要以上に華美・派手なものや黒ずくめなど、企業人と言うよりは暴力団員の様な出で立ちをした者が経営陣・管理職の中にいる。フロント企業である可能性もある。
採用 [編集]
* 採用通知を書面で通達しない。採用通知の電話連絡や雇用契約の締結後に雇用条件を口頭で次々と変える。職種の変更などもある。録音しない限り証拠が残らない。
* 個人事業者として採用する。社員で無い場合、労災の責任や社会保険の会社負担が無い。正社員で採用されたと思っていても、労働契約書の記載が違う場合がある。
* 採用した直後に労働契約書を書かせない(労働者に不利な雇用契約を締結させるため)。また、使用者の意向で労働者を退職させる場合、正社員で採用させずに期間契約の雇用契約を締結させて、期間満了になれば退職させる。
* 採用した直後に、従業員の給与振込み用の口座を尋ねないか、または従業員に給与のシステム(タイムカード制か歩合制か、など)を一切伝えない。働きが悪ければ、給与未払いまたは減給で解雇しようと目論んでいるため。
* 法人ならば加入義務がある社会保険の制度が無い、あるいは入社後一定期間(試用期間終了後というケースが多い)を経なければ加入できない。
退職 [編集]
* 従業員側から辞めようとすると、短期間かつ単純には辞められない。「どこに行っても通用しない」などと脅迫したり、退職日を勝手に先延ばしする。一方で会社側からは自由に退職させられる。
* 強制的な借金や強制貯金。特に給料を全額会社が所有する指定の口座へ振り込ませる事は労働基準法で禁止されている(労働基準法18条1項)。退職する際に借金返済を迫るなど、会社に縛り付ける為に行われる。水商売や風俗業、寮を持つ日雇いを多く雇う企業(脱走防止のため)に見られる。
* 退職理由欄に「自己都合」記入を強制。セクハラなどで退職する場合でも、労働基準監督署へ提出する書類には「会社都合」と記載させない。再就職に影響が出ると脅す場合もある。
* 退職者については勤務履歴を隠したり、あるいは隠さなければならなくなったり、勤務中に負った心的外傷・うつ病などに退職後も長期間にわたり苦められている場合がある。
出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』